フルマラソンに再チャレンジ(最終回)

ランハイメンバーTさんのフルマラソン再チャレンジ。いよいよ最終回です。

12月18日、日曜日 みえ松阪マラソン当日。
三重県松阪の天気は晴れだった。

スタート会場は駅から徒歩で25分のところにある文化ホールだった。
少しでも体力を温存したいという思いから、シャトルバスを利用した。
駅の階段を登り降りすると少し古傷の左膝が痛んだが、歩く時は痛くなかった。
「マラソンに階段は無い!この程度ならロキソニンを飲めば何とかなりそう。」
前向きな気持ちで会場へ向かった。

会場に到着し、スタートに備えて身支度を始めた。
青空は見えていて日差しもあったが寒かった。おまけに風が強い。
「体感温度は5度以下かな。」ウインドブレーカーを羽織った。
背中のウインドブレーカーの下に、「心臓手術しました。目標 完走!!」の文字が透けて見える。
「ちょっと恥ずかしいけど、もしかしたら同じ境遇の人から声かけてくれるかも。
別に読まれなくてもいいし。」

午前9時スタート。

走っていると、背中の文字に気が付いたランナー達から、様々な声援や励ましの声がかかってきた。
「わぁ、すごい!頑張ってください。」
「勇気づけられるわ!」
「私、乳がんだったの。」
「胃を切ってね。」
「肺の手術をしたんだ。」
「今、70だけど、60の定年から走り始めたんだ。80までは走りたいな。お互い頑張ろうね!」
素敵なランナー達とおしゃべりしながら走っていると、いつの間にか20キロ、30キロと距離を稼いでいった。

途中、32キロ付近のトンネル中は、地元の高校生たちが考えたイルミネーションとプロジェクトマッピングで彩られており、その中を走っていると楽しい気分になり、暫しマラソンの疲れを忘れてしまった。
長いトンネルを抜け、コースの最高地点を過ぎた。あとは下り基調だった。

サンタの格好をしたコスプレカップルに声をかけられた。
「さっきもお見かけしましたよ。もうすぐゴールですね。完走できますよ。」
まだゴールした訳でもないのに目がウルっとしてしまった。

ゴール手前で、5時間30分のペーサーから「5時間半きれますよ!がんばれー、がんばれー」と声をかけられた。
その声に応えたい気持ちではあったが、心臓のことを考えダッシュは怖くてできなかった。

「ゴールのアーチが見えた。もうすぐゴール。ゴールできる。」

アーチをくぐると同時にゴールのマットを踏んだ。
5時間28分17秒。
ベストタイムからは程遠いが、タイムなんてどうでもよいと思った。
病気になって、もう走れないと思っていた自分が、またこうしてフルマラソンを完走できたことだけが嬉しかった。

走ってきた道を振り返った。まだ沢山のランナーが走っている。
私が完走できたのは、同じランナーの励ましのおかげだ。サンタのコスプレカップルを探して、
「ありがとう」と言いながらハグしあった。
42キロ走って、エネルギーも頭も空っぽでスッカラカンになったけど子供みたいな気持ちだけは残っていて、涙がぽろぽろこぼれ落ちた。
72回目のフルマラソン完走。久しぶりの達成感だった。

その日の夕食は、自分へのご褒美として松阪牛のすき焼きを堪能した。

心臓手術の前には、成田ランナーズハイのみんなからLINEでたくさんのエールをもらい、術後の痛みにも耐えられた。
走ることで私は素晴らしい仲間にであることができた。本当にありがたいと思った。
これからも感謝の気持ちを大切に自分のペースでゆっくりのんびり走っていこう。

おわり。

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