フルマラソンに再チャレンジ（第４回）

ランハイメンバーTさんのフルマラソン再チャレンジの第４回目です。

大会前日、名古屋行きの新幹線の中。今日までのことを思い返していた。

病院ではステージ４の心臓病と言われ、手術前のカテーテル検査では重症と診断された。
癌と違って転移するわけじゃないので、手術すれば治ると信じていたが、さすがに”死”を意識した。
手術前には、自分が入るお墓を探した。お守りも買った。
前から気になっていた食べ物を食べに行ったりもした。

手術は無事に成功。
その後は、リハビリ、ウォーキング、筋トレ、10キロマラソン、ハーフマラソンと、徐々に運動量を増やしていった。本当は今日までに３０キロ走を１度くらいやっておきたかったけど、心臓の負担を考えると怖くてできなかった。練習量が増えると古傷の左ひざも痛み始めた。結局、今日までアクアラインマラソンのハーフが最長距離だった。
「こんな状態で、明日のフルマラソンを完走できるのかしら。」
いまさら考えても仕方がない。とにかく、完走。完歩でもいい。ゴールできればいい。

名古屋で在来線に乗り換え、開催地の松阪へ入った。
ホテルのフロントはチェックインのランナーで溢れていた。
やっとチェックインが終わり、部屋に入った。
混んだお風呂には入りたくなかったので、早めに大浴場へ行くと誰もいなかった。
のんびり一人でお湯に入り、脱衣所で着替えていると、ランナーらしき女性グループが入ってきた。
彼女たちの話によると、明日の朝、ホテルのレストランは混みそうなので、コンビニのおにぎりで済ますという。
「私もそうしよう。」
コンビニへ足を運んだ。

夕食も軽く済ませ、部屋に戻り、明日の準備をした。ウェア、エネルギージェル、お守りのロキソニン。
天気が気になるので、スマフォで何度もチェックした。まるで遠足前の小学生の気分だ。
「無事に完走出来たら、松阪牛を食べよう。」
楽しみと不安が入り混じる中、ベッドに入った。

明日はいよいよ本番。

次回、最終回です。